安全研究会の紹介
SCE・Net安全研究会は、幅広い"安全"に係わる課題の中で、社会性が高く具体性のある課題を中心に研究し、成果を発信しております。化学プラントや石油精製プラントなどのプロセス産業に資するため、世界標準のプロセス安全管理の紹介をはじめとして、ベテランの経験と知恵を分かり易く次世代に伝承できる形にして発信することを目標に、活動をしています。
活動紹介
1.安全研究会の予定
次回の研究会の日程につきましては、SCE・Netの「行事予定」をご覧ください。
2.AIChE/CCPSとの共同事業
2-1 「Process Safety Beacon」の日本語版掲載
米国化学工学会(AIChE)の安全関係の組織である化学プロセス安全センター(CCPS:Center for Chemical Process Safety)は、産業界の人たちの安全標識になることを目的としてリーフレット【A4一枚】「Process Safety Beacon」を毎月発行しています。主に製造現場で働く方たちを対象に、実際に起こった事故災害を写真入りで取り上げ、そのような事故が自分たちの職場で起こらない為に、具体的に何が重要かを判り易く解説した資料で、世界各国の言葉に翻訳されて、配信されています。安全研究会は、2006年4月号より日本語版の翻訳を担当してきました。また、2017年には、日本語版の読者からの要望を受けて、2001年11月号(PSB第1号)から全てのバックナンバーを和訳してSCE・Netのホームページ及びCCPSのホームページに掲載しています。
CCPSからEメールでの配信を希望される方は、CCPSのホームページで登録をしてください。日本語版へのリンクも付けられています。
「Process Safety Beacon」の和訳はこちら。
2-2「PSB和訳と安全談話室」の掲載
安全研究会では、毎月、CCPSから送られてくる次月の英文のProcess Safety Beacon (PSB)を先ず翻訳担当者が和訳案を作成し、会合の場で議論しながら纏め役が日本語版の最終原稿に仕上げています。その後、その月の号で取り上げられた話題を中心にメンバーが意見交換を行っています。この内容をもう一人の担当者が整理、編集し、「安全談話室」として纏めています。このPSB和訳と安全談話室はホームぺージに【PSB和訳と安全談話室】として公表し、株式会社工業通信の月刊誌「化学装置」にも掲載しています。
2-3 CCPSプロセス安全基準(Process Safety Metrics)の和訳を掲載
安全研究会では、従来からCCPS(The Center for Chemical Process Safety)が作成した"Process Safety Leading and Lagging Metrics"の翻訳を行い、CCPSと安全研究会のホームページに公開しておりました。CCPSは2022年6月に"Process Safety Metrics - Guide for Selecting Leading and Lagging Indicators" Version 4.1を発行し、安全研究会は同年11月末にこの翻訳をCCPSに提出しました。現在、英語版と共にCCPSのサイトに掲載されています。CCPSのサイトはこちらをご覧ください。また、Version 4.1の日本語版はこちらをクリックしてもご覧いただけます。尚、過去のバージョンには最新版に含まれていない情報も少なからずありますので、引き続きVersion3.2 の翻訳はこちらを、Version 2 の翻訳第2版は引き続きこちらをクリックすることでご覧頂ける様に残しております。
メトリクスを活用してプロセス安全のレベル向上を目指しておられる皆様のお役に立つことが出来れば幸いです。
2-4 CCPS Golden Rules & Key Principles の和訳
安全研究会では、CCPSの発行した"Golden Rules & Key Principles"の和訳に取り組んでいます。Golden Rules が3件、Key Principles が3件、CCPSのホームページに掲載されているものです。Golden Rules には「必ずするべきこと」「鉄則」などの意味があり "Chlor-Alkali", "Combustible Dust", "Hydrogen Sulfide" の3件が掲載されています。この度Golden Rules3件の和訳を完成して「プロセス安全の鉄則」としてCCPSに提出しました。次のリンクからCCPSのオリジナルページ、及び和訳版「クロル・アルカリ」「粉塵爆発」「硫化水素」にアクセス頂けます。業務でこれらを扱っておられる方たちには参考になる内容ですので、是非ご活用ください。 Key Principles については、現在和訳作業を続けておりますので、完成しましたら掲載する予定です。
2-5 CCPSとの共同出版/翻訳
1) 2015年3月に「事例に学ぶ化学プロセス安全」(丸善出版 ¥3200.)をCCPSと共同で出版しました。この本は、安全研究会が2006年4月号から2014年1月号までに和訳したPSBと談話室の内容を元に、事例の詳しい解説、事故の要因と教訓、現場の経験者が語る、事故を防ぐためのポイント、日本で起こった類似事故などを各号毎に纏めたものです。PSBの部分はCCPSに著作権がありますので、共同出版の形を取っています。この本はCCPSでも高く評価され、CCPSがBeaconの解説本"Book of Beacons"を作成するきっかけとなりました。尚、"Book of Beacons"は市販されておりませんので、CCPS会員にならないと読むことができません。
2) 2018年12月に「若い技術者のためのプロセス安全入門」(丸善出版 ¥4800.)を出版しました。この本は、CCPSが2016年に出版した”Introduction to Process Safety for Undergraduates and Engineers”の翻訳です。内容はCCPSの推奨するプロセス安全のコンセプト、”リスクに基づくプロセス安全”(RBPS)を主に大学生や若いエンジニア向けに判り易く解説したものです。
3) 2021年6月に「化学プラントの老朽化」(丸善出版 ¥6800.)を出版しました。この本はCCPSが2018年に出版した”Dealing with Aging Process Facilities and Infrastructure”の翻訳です。老朽化した設備やインフラストラクチャーをどの様に管理すべきかについてプロセス安全の観点から解説しています。設備の老朽化に取り組まれている方は、是非参考にしてください。
3. 化学工学会安全部会との協力
安全研究会は、化学工学会の安全部会とも協力して、化学プラントや石油精製プラントなどの安全向上に役立つ活動を行っています。安全研究会が翻訳した書籍の出版記念講演会の開催なども行ってきました。
化学工学会 安全部会のホームページはこちらをご覧ください。
4. 化学工学会年会での発表
化学工学会の年会で以下の発表をした実績があります。
第88年会 2023年3月 "COVID-19 をきっかけとしたプロセス安全のオンライン講習":ポスターセッション
第87年会 2022年3月 CCPSの提唱する”化学プラントの老朽化”対策の概念と日本での活用:口頭発表
第86年会 2021年3月 ”プロセス安全技術者の育成”について:ポスターセッション
第85年会 2020年3月 プロセス安全技術者の育成 :口頭発表
第84年会 2019年3月 OSHA PSMから“リスクに基づくプロセス安全”へ:口頭発表・ポスターセッション
第83年会 2018年3月 SCE・Net安全研究会活動と方向性:ポスターセッション
第82年会 2017年3月 SCE・Net安全研究会活動と方向性:ポスターセッション
第80年会 2015年3月 SCE・Net安全研究会活動と事例に学ぶ化学プロセス安全紹介:口頭発表・ポスターセッション
第78年会 2013年3月 PSB記事の実例と活用方法
第77年会 2012年3月 CCPSプロセス安全メトリックスの作成目的-2011年改訂版
第77年会 2012年3月 CCPSプロセス安全メトリックスの改訂内容と事例評価
第76年会 2011年3月 プロセス安全メトリックス ―CCPSの提案する新しいプロセス安全測定基準の紹介―
5. 産総研との共同事業 経産省プロジェクト
2015 年 7 月に産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)から経済産業省のプロジェクトの一部として過去の事故を分析して現場に役立つチェックポイント集作成に協力して欲しいとの相談を受けた。安全研究会のメンバーから有志を募り、このプロジェクトに参加することになり、2015 年度、2016 年度、2017 年度と 3 年に渡りチェックポイント抽出作業を SCE・Net の受託事業として実施した。
平成27年度 石油精製保安対策事業 高圧ガスの危険性評価のための調査研究
別添1 別添2 別添3 別添4
平成28年度 石油精製保安対策事業 高圧ガスの過去事故分析によるチェックポイントの調査研究
平成29年度 石油精製等に係る保安対策調査等事業 高圧ガスの過去事故分析によるチェックポイントの調査研究
6.危機管理マニュアルの作成支援
危機管理は大きく分けて、①危機発生のリスクを軽減する計画の実施、②危機発生による被害を最小化する初期対応、③救助活動と2次被害発生の軽減、④復旧活動と被害者支援、の四つのフェーズがあります。
この中で特に、フェーズ②と③の対応は緊急を要するため、危機管理マニュアルによる組織活動の徹底が必須です。
安全研究会では、平成17年度、SCE・Netの会員企業からの要請により、危機管理マニュアルの作成を支援しました。
安全研究会としては、危機管理を今後の研究テーマの一つに考えています。
7.安全警句集の掲載 安全警句集のリンク
相変わらず化学工場における事故が発生しており、取り扱う物質や設備・技術は多様になっているとは言え、事故が全く新規な要因により発生している事例はほとんど無く、残念ながら過去の事例と類似した事故が繰り返されております。
そこで、安全研究会では安全技術伝承の観点から、過去に発生した色々な事故事例からその原因を解析し、事故の原因となる要因を「警句集」として纏めて化学工場の安全に寄与したいと考え、警句集作成の活動をしてきました。
主として日本での約600の事故事例を収集して作成作業を進め、出版計画も併せて検討していた折、PSBの和訳事業の契約が締結され、更に、PSB事例をベースにした書籍「事例に学ぶ 化学プロセス安全」(丸善出版2015年)の上梓となったため、PSBと同様な発想による「警句集」の上梓を中止することにしました。
しかし、運転関係の原稿はほぼ検討を済ませていましたので、「警句」という直接的な表現での注意喚起により、多くの方々に事故防止の参考にしてもらえたらと考えて、一部修正、補足をして、ここに、【124事例の警句集原稿】を掲載する次第です。
安全研究会メンバーの投稿写真
2016年7月14日の安全研究会での安全談話室風景です。当時は化学工学会の会議室でPSBの翻訳と安全談話室のディスカッションをしていました。 現在はZoomを利用して、活動を続けています。そのため、遠隔地にお住いの方も気楽に参加できるようになりました。
化学工学会の会議室で定例会議を行っていた頃の写真
(現在はオンラインで定例会議を行っています。)
栃木県那須塩原市関谷のもみじ谷大吊橋から撮影した塩原渓谷の秋。
もみじ谷大吊橋は全長320メートルで無補剛桁歩道吊橋としては、本州最大級の長さだということです。
滝とEV車両
JR宇都宮~烏山間で運転されている蓄電池駆動電車(ACCUM) EV-E301系が
那須烏山市の「龍門の滝」の上を走行するところ。国内最初のEV営業用車両
2021年11月11日